「打ち出し」って何?
金属加工の技術として、主に「彫金」、「鍛金」、「鋳金」の三つに分けられる内の、
「彫金」に属し、金属板を金槌と鉄タガネを用いて叩き出し、半立体の模様を施す作業です。
この技法はSvalzo(打ち出し)、Cesello(模様入れ)に別れます。
イタリアでは15世紀から16世紀に掛けて、武具の分野で幅広く見られ、
あちこちに彫金工房や職人養成学校が点在し、ドイツ、オーストリア、フランス、ヨーロッパ各国でもっとも盛え、発展した仕事の一つです。
この時代、活躍した多才な芸術家ベンベヌート・チェリーニは、フィレンツェを代表する彫金界のミケランジェロ。
ランツィの回廊に勇壮に立つ「ペルセウス」のブロンズ像は代表作の一つです。
打ち出し装飾の作業は、大まかに2つの工程に分けられます。
※裏側から模様を立体に叩き出す「打ち出し」作業、
※半立体に打ち出された模様に先端の形の異なる鉄タガネを使い細かな装飾をする「模様入れ」作業です。
まず金属板に模様を左右逆になるように描き写し、ヤニ台もしくは、適度な硬さの砂などの詰まったクッションの上で模様の輪郭の内側を叩いて立体に出していきます。(左右逆に写した模様を叩くことで、表になる面に正位置の模様が立体に浮かび上がってきます)
大まかな形まで半立体に出したら、裏面を上向きに置き、そこへ炉で溶かしたヤニを流し込みます。
これを冷ました後、同じように温めたヤニ台上に貼り付け、ある程度冷めたら今度は表面の装飾に入ります。
この冷め固まったヤニが装飾作業のできる適度な硬さで支えになってくれます。
真っ平らの金属板から半立体の模様が浮かび上がりました
金属加工の歴史は、紀元前4000年よりも以前、メソポタミア、古代エジプト文明に遡ると言われています。
大陸を経て日本に伝わった弥生時代。
飛鳥時代には仏教の布教と共に、仏教美術品に用いられ、江戸時代から明治時代に掛けて一般的な日用品にまで用いられるようになります。
明治維新以降、博覧会などの開催を期に日本の金工技術は、芸術の世界でも高く評価される事になります。
この技術は、指輪、ペンダント、ピアスなどの小さな作品にも用いられます
こちらは「鍛金」の作業風景です。